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退職手当計算と退職金の手取りシミュレーション

退職金を受け取るとき、額面そのままが手元に残るわけではありません。退職手当計算でいちばん見落とされがちなのが、所得税と住民税の扱いです。このページでは、勤続年数と退職金の総額を入れるだけで、退職所得控除を差し引いた後の税額と手取り額の目安をその場で計算できます。

退職金の手取り額を自動計算する

手取り額の目安
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退職金の総額-
退職所得控除額-
課税退職所得-
所得税・復興特別所得税-
住民税-
税金の合計-

注意:iDeCoや企業型DCの老齢一時金を一時金で受け取る場合、受け取りの間隔によっては「重複調整」で退職所得控除が減り、この計算結果より税金が増えることがあります。このシミュレーションは重複調整を反映していません。詳しくは下の「iDeCo・企業型DCの一時金と退職金を両方受け取るとき」をご覧ください。

退職金の税金は4つのステップで決まる

退職金の税金は給与とは切り離して計算する「分離課税」で、他の所得と合算されません。そのため、退職した年に給与が高かったとしても、退職金の税率がその影響を受けることはありません。計算の流れは全国共通で、次の4ステップです。

  1. 退職所得控除を差し引く。勤続年数に応じて決まる控除額を、退職金の総額から引きます。
  2. 残りを2分の1にする。控除後の金額の半分だけが課税対象(課税退職所得)になります。これを「2分の1課税」といいます。
  3. 所得税の税率をかける。課税退職所得に超過累進税率を適用し、さらに復興特別所得税2.1%分を加えます。
  4. 住民税を加える。課税退職所得の10%が住民税としてかかります。

数式で表すと、課税退職所得 =(退職金の総額 − 退職所得控除額)× 2分の1 です。計算の途中で出る課税退職所得は、1,000円未満の端数を切り捨ててから税率をかけます。控除額が退職金の総額を上回れば課税退職所得はゼロとなり、税金はかかりません。長く勤めた人ほどこのケースが多くなります。

退職所得控除額の決まり方

退職所得控除額は勤続年数だけで決まります。勤続20年までは1年につき40万円ずつ増え、20年を超えた部分は1年につき70万円ずつ増えるため、長く勤めるほど非課税の枠が広がります。勤続年数の数え方にも決まりがあり、1年未満の端数は1年に切り上げます。たとえば10年2か月勤めた場合は11年として計算します。また、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、控除額に100万円が加算されます。

勤続年数退職所得控除額計算の区分
1年80万円下限額(40万円×1年<80万円のため)
3年120万円40万円×3年
5年200万円40万円×5年
10年400万円40万円×10年
15年600万円40万円×15年
20年800万円40万円×20年
25年1,150万円800万円+70万円×5年
30年1,500万円800万円+70万円×10年
35年1,850万円800万円+70万円×15年
40年2,200万円800万円+70万円×20年

所得税の税率表(退職所得にも同じ表を使います)

課税退職所得税率控除額
1,000円 〜 194万9,000円5%0円
195万円 〜 329万9,000円10%97,500円
330万円 〜 694万9,000円20%427,500円
695万円 〜 899万9,000円23%636,000円
900万円 〜 1,799万9,000円33%1,536,000円
1,800万円 〜 3,999万9,000円40%2,796,000円
4,000万円 〜45%4,796,000円

この表で出した所得税額に2.1%分を上乗せしたものが、復興特別所得税を含めた実際の所得税額です。当サイトのシミュレーションでも、所得税は100円未満を切り捨てて表示しています。

計算例:勤続30年・退職金2,000万円の場合

具体的な数字で流れを確認してみましょう。勤続30年で退職金2,000万円を受け取るケースです(上のシミュレーションの初期値と同じ条件です)。

  • 退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
  • 課税退職所得:(2,000万円 − 1,500万円)× 2分の1 = 250万円
  • 所得税:250万円 × 10% − 97,500円 = 152,500円。これに復興特別所得税を加えて100円未満を切り捨てると 155,700円
  • 住民税:250万円 × 10% = 250,000円
  • 税金の合計:405,700円、手取り額:2,000万円 − 405,700円 = 19,594,300円

額面2,000万円に対して税金は約40万円、割合にしておよそ2%です。給与でこれだけの金額を受け取れば税率はもっと上がりますが、退職金は控除と2分の1課税の二重の仕組みで負担が抑えられていることが分かります。

勤続5年以下は計算が変わる「短期退職手当等」の特例

転職を繰り返して勤続年数が短い場合には注意が必要です。勤続年数が5年以下の退職手当は「短期退職手当等」と呼ばれ、退職所得控除を引いた後の金額のうち300万円を超える部分には2分の1課税が適用されません。つまり、控除後の金額が300万円までは半分になって課税されますが、超えた部分は全額が課税対象になります。

例として、勤続4年・退職金800万円のケースを計算してみます。退職所得控除は40万円×4年=160万円です。控除後の640万円のうち、300万円分は2分の1で150万円、残りの340万円はそのまま課税対象になるため、課税退職所得は合計490万円です。所得税は564,100円、住民税は490,000円、税金の合計は1,054,100円で、手取りは6,945,900円となります。もし勤続6年で同じ800万円を受け取れば、控除220万円を引いた580万円の半分290万円だけが課税対象となり、税金は大幅に下がります。あと少しで勤続6年に届く場合は、退職日をずらすだけで手取りが大きく変わることがあるため、退職時期の検討材料にしてください。

このページのシミュレーションは、勤続5年以下の入力に対しても、この特例を自動で反映します。結果欄に特例適用の注記が表示された場合は、上記の計算方法で税額を出しています。

公務員の退職手当の計算方法

「公務員退職金計算」と呼ばれるものは、民間の退職金とは支給額の決まり方が根本から異なります。民間企業の退職金は各社の退職金規程で決まりますが、公務員の退職手当は法律や条例にもとづいて計算され、基本の構造は次のとおりです。

退職手当 = 基本額 + 調整額

基本額は「退職日の俸給月額 × 支給率」で求めます。支給率は勤続年数と退職の理由(定年、勧奨、自己都合など)によって細かく変わり、自己都合の場合は定年などより低い割合になります。調整額は、在職中の役職や職務の級に応じて計算される加算分で、職務の級ごとに定められた調整月額をもとに算出されます。国家公務員であれば国家公務員退職手当法が根拠で、人事院や各府省の公開資料で支給率の表を確認できます。

地方公務員退職金計算と警察官退職金

地方公務員の退職手当も「基本額+調整額」という骨組みは国家公務員と共通ですが、根拠は各都道府県・市区町村の条例です。これが地方公務員退職金計算の特徴で、同じ勤続年数でも自治体によって支給率や調整額の扱いが多少異なることがあります。警察官退職金について調べる人も多いのですが、警察官は都道府県の職員、つまり地方公務員です。そのため警察官の退職手当は、勤務する都道府県の退職手当条例にしたがって計算されます。正確な見込額を知りたい場合は、勤務先の人事担当や各自治体の条例・支給率表で確認するのが確実です。

なお、支給額の決まり方は民間と違っても、税金の計算方法は公務員も民間もまったく同じです。受け取った退職手当は退職所得として扱われ、退職所得控除と2分の1課税が適用されます。支給見込額が分かれば、このページのシミュレーションにそのまま入力して税額と手取りの目安を確認できます。

役員退職金計算と功績倍率の考え方

会社役員が受け取る役員退職金計算では、「功績倍率法」という方法が広く使われています。これは、在任中の功績を倍率で評価して金額を決める方法です。

役員退職慰労金 = 退職時の最終報酬月額 × 役員勤続年数 × 功績倍率

役員退職金 功績倍率は、代表取締役で3.0倍程度、専務で2.5倍、常務で2.0倍、取締役で1.5倍、監査役で1.0倍といった水準が実務上の目安とされることが多く、一般的には1.0〜3.0の範囲で役職や貢献度に応じて設定されます。ただし、役員退職金は金額が大きくなりやすいため手続きも厳格で、支給するには株主総会の決議(または定款の定め)が必要です。さらに、同業種・同規模の会社と比べて著しく高額だと判断されると「過大役員退職金」として、その過大な部分が税務上損金に認められないリスクがあります。功績倍率を設定する際は、類似法人の水準と照らして説明できる範囲に収めることが大切です。

受け取る役員側の税金は、原則として従業員と同じ退職所得の計算です。ただし、役員としての勤続年数が5年以下の場合は「特定役員退職手当等」にあたり、2分の1課税が一切適用されません。役員に就任して間もなく退任するケースでは、同じ金額でも税負担が跳ね上がるため注意してください。

退職金相場:勤続10年ではいくらくらい?

自分の退職金が多いのか少ないのかを判断するには、公的な調査にもとづく退職金相場と比べるのが参考になります。勤続10年のモデル退職金(大学卒)を見ると、企業規模によって大きな差があることが分かります。

区分(勤続10年・大学卒)会社都合自己都合
大企業・総合職306万円183万円
大企業・一般職256万円169万円
中小企業(東京都内)150万円112万円

大企業の数値は中央労働委員会「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」、中小企業の数値は東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」のモデル退職金をもとにしています。これらはあくまで統計上のモデルであり、実際の支給額は勤め先の退職金制度の有無や規程の内容で決まります。勤続10年では自己都合だと会社都合の6〜7割程度になるのが一般的で、差が開きやすい時期だと言えます。支給見込額が相場と大きく離れている場合は、まず就業規則や退職金規程で自分の条件を確認してみてください。

iDeCo・企業型DCの一時金と退職金を両方受け取るとき(重複調整と2026年の改正)

iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)の老齢給付金を一時金で受け取ると、その一時金も「退職所得」として扱われ、加入期間に応じた退職所得控除が使えます。ここで見落としやすいのが、退職所得控除の枠は退職金と一時金で共通だという点です。同じ期間について両方で枠をまるごと使えてしまうと、非課税枠の二重取りになってしまいます。そこで、受け取りの間隔が近い場合には、後に受け取る側の控除額から、重複する期間分として計算した控除額を差し引く決まりがあります。これを重複調整(重複排除)といいます。

影響を受けるのはどんな人か

対象になるのは、勤務先から退職金を受け取る人で、なおかつiDeCoや企業型DCの一時金も受け取る(受け取った)人です。典型的なのは「60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で定年退職金を受け取る」という受け取り方でしょう。ただし、実際に税金が増えるのは、受け取る金額が調整後の控除枠を超える場合だけです。退職金と一時金の合計が枠の中に収まる人には、実質的な影響はほとんどありません。また、iDeCoを年金(分割)で受け取る場合は公的年金等の雑所得に分類されるため、この重複調整の対象にはなりません。

2026年1月から調整期間が「10年」に拡大された

改正前は、iDeCo等の一時金を先に受け取った場合、その受給年と前年以前4年以内に退職金を受け取ると調整の対象でした。言い換えると、受け取りの間隔が5年以上空いていれば調整を避けられたため、これは「5年ルール」と呼ばれてきました。令和7年度税制改正により、2026年1月1日以後に支払われる老齢一時金については、この期間が前年以前9年以内に延びました。受給年を含めて数えると10年間で、「10年ルール」と呼ばれるようになっています。60歳で一時金を受け取った人は、70歳以降に退職金を受け取らない限り、原則として調整を避けられなくなった計算です。

なお、順番が逆の場合、つまり退職金を先に受け取ってから後でiDeCoの一時金を受け取る場合に使う基準(前年以前19年以内)は、今回の改正では変更されていません。また経過措置として、改正が影響するのは、老齢一時金の支払いと退職手当等の支払いの両方が2026年1月1日以後に行われる場合です。2025年中に一時金を受け取り終えた人には、従来の5年ルールがそのまま適用されます。

計算例:間隔5年では改正後に税金が約88万円増えるケース

勤続40年で退職金2,800万円を受け取り、iDeCoの加入期間が15年(すべて勤続期間と重なっている)で、一時金を2026年(60歳)に、退職金を2031年(65歳)に受け取るケースで計算してみます。

  • 通常の退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(40年 − 20年)= 2,200万円
  • 重複する期間分:加入15年分として計算した控除額 40万円 × 15年 = 600万円
  • 調整後の控除額:2,200万円 − 600万円 = 1,600万円
  • 課税退職所得:(2,800万円 − 1,600万円)× 2分の1 = 600万円
  • 所得税:600万円 × 20% − 427,500円 = 772,500円、復興特別所得税を含めて 788,700円。住民税は 600,000円、税金の合計は 1,388,700円で、手取りは 26,611,300円 です

受け取りの間隔が5年あるため、改正前ならこのケースは調整の対象外で、控除額2,200万円をまるごと使え、税金の合計は506,700円で済みました。改正後は約88万円(882,000円)税負担が増える計算です。受け取りの順序と間隔だけでこれだけ差が出るため、iDeCoの一時金を受け取る前に、勤続年数のうち何年が加入期間と重なっているかを数えておくことが大切です。年金受け取りや、一時金と年金の併用も選択肢になります。迷う場合は、勤務先の担当者や税理士に試算を依頼してください。

よくある質問

退職金に税金がかからないのはいくらまでですか?

退職所得控除額の範囲内なら税金はかかりません。控除額は勤続年数で決まり、勤続30年なら1,500万円まで、勤続20年なら800万円までは所得税・住民税ともにゼロです。控除を超えた分も、その2分の1だけが課税対象になります。

勤続年数はどう数えますか?

退職所得控除の計算では、勤続期間の1年未満の端数は1年に切り上げます。たとえば勤続10年2か月なら11年として計算します。入社日と退職日を確認し、端数がある場合は切り上げた年数で入力してください。

退職所得の受給に関する申告書を出さないとどうなりますか?

申告書を勤務先に提出しないと、退職所得控除が適用されず、退職金の額面に一律20.42%の税率で源泉徴収されます。払い過ぎた分は確定申告で精算できますが、手続きの手間を避けるためにも、退職前に申告書を提出しておくのが確実です。

公務員の退職手当にも同じ計算で税金がかかりますか?

はい。支給額の決まり方こそ民間と異なりますが、受け取った退職手当にかかる税金は、民間企業の退職金と同じ退職所得の仕組みで計算します。退職所得控除と2分の1課税がそのまま使えるため、このシミュレーションで税額の目安を確認できます。

勤続5年以下だと、なぜ税金が高くなるのですか?

勤続年数が5年以下の場合の退職手当は「短期退職手当等」とされ、退職所得控除を引いた後の金額のうち300万円を超える部分には2分の1課税が適用されないためです。同じ金額でも、勤続6年以上の場合に比べて課税対象が大きくなることがあります。

住民税は退職金からどう引かれますか?

退職金にかかる住民税は、原則として課税退職所得の10%で、所得税とあわせて支給時に特別徴収(天引き)されます。給与にかかる住民税のように翌年へ持ち越される分とは別に、その場で精算されるのが特徴です。

根拠・参考資料

  • 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」: nta.go.jp
  • 国税庁 タックスアンサー No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」: nta.go.jp
  • 退職所得控除の重複調整と2026年の改正(令和7年度税制改正による調整期間の延長)については、国税庁の退職所得の解説(上記No.1420)と、財務省が公表した令和7年度税制改正の資料で内容を確認しています
  • 退職金相場の出典:中央労働委員会「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」および東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」(三井住友銀行の解説ページで集計表を確認): smbc.co.jp

このシミュレーションは一般的なケースを想定した目安です。同じ年に別の退職金を受け取った場合や、企業年金の一時金との重複がある場合などは計算が変わります。正確な税額は勤務先の担当者や税務署、税理士にご確認ください。本ページは税務相談の代替にはなりません。

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